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星条旗のショアライン

第15章 【長編】2019年 Xmas企画②(MCU/鷹and邪)



(6)

脳髄の奥が俄に燻る。理性の箍が牡丹から松葉に変わる線香花火のように燃え千切れて落ちる音は案外軽くて、鈴の音のようだった。束の間、俺の拳は色情に溺れ掛けているロキの腹を抉るようにして撃ち据えた。ロキは短く呻くと身体を湾曲させて宙を舞う。その時の外套が胴体にまとわりつく様とは飛び立つ直後の蝙蝠のようだったが、目にも留まらぬ速さで壁を突き破って行ってしまった瞬間だけは羽二重で出来た壊れた傘のようだった。
「あっ……!」
しまった、と後悔してももう遅い。剛性がある筈の金属がことごとく破壊されていく音に顔を顰めるが、だからといって慣性で殴り飛ばされている状態のロキは止まらない。恐る恐る自らの過ちを覗き込む。目が暗闇に慣れない内の洞洞とした穴には色々な意味で恐怖が募ったが、暗順応を経ると詳細が見えてきた。
目を凝らすと、大穴が繋げてしまった隣室で服をまともに着用していないクリントの慌てふためく姿が窺えた。どこかへ連絡を取っていたらしく、スマホを耳に押し当てながら足元でひっくり返っているであろうロキを極めて慎重に観察している。そして破壊の痕跡から被害を把握する意図で残材部分が著しい大穴の縁を掴み軽く身を乗り出した途端、更に表情を強張らせてしまった。

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