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星条旗のショアライン

第14章 【長編】2019年 Xmas企画①(MCU/鉄and盾)



(……このままでは埒が明かない)
事実、時間が惜しい。会場を確保した後もやらなければならないことは山程あるというのに、そのつどスティーブから口を挟まれていては纏まるものも纏まらなくなってしまうだろう。過保護な詮索と邪推による軽率な発言は杞憂の範囲を超えないばかりか実際にトニーを不愉快にさせた。交渉や契約を取り決める場に柔軟な考えを持たない人間を連れていく選択は悪手だと結果が出てしまっているのだ。俺の懐の心配をしてくれるのは嬉しい。しかし今回ばかりは形無しだ。君には悪いが、希望の実現の為ならどんな手も使うのだという決意を見せてやる。
「スティーブ、先に帰ってくれ」
「……ッレイン」
「君がいては話が進まないんだ」
「あ……あぁ、わかった……」
気力を注いで絞り出した俺の低い声に、スティーブは目に見えて動揺した。それもそのはず。突き放す様な台詞を吐いたのはこれが初めてだからだ。後日になって平素のトニーが『それでなくても声の低い君が恫喝した瞬間のロジャースの顔は傑作だった』と苦い笑みを噛みながら教えてくれたので手ごたえ通り、効果は覿面であったようだ。露骨にショックを受けた顔で腕組みを解き半歩下がったスティーブを見た瞬間に悄気る大型犬の姿が脳裏を過ったが、ここで絆されてしまえば普段と変わりない。心を鬼にしなければ。鬼に……――。

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