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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第15章 生命を司る樹


 何かが暴れている音が近くなった。わたしは慌てて其方へと全速力で走る。すると、目の前を何かが物凄いスピードで横切って行った。ガシャン! と横切った方向で音がする。如何やら吹き飛ばされたらしい。
 慌てて駆け寄ると、そこには血塗れ傷だらけの敦くんがいた。

「っあ、敦くん!?」
「う……泉、さん……?」
「しっかりして、誰にやられたの?」
「泉さん……逃げて……」

 敦くんが飛んで来た方向から靴音が聞こえた。ギクリと身体を強張らせると、如何やら来たのは細身の男のようだった。

「ははは! こんな物か、人虎よ!」

 如何やらあれが組合の長──フィッツジェラルドらしい。わたしは彼を一瞥した後、敦くんの手を取った。

「此処から離れましょう。手当てするわ」
「手当て、って……どうやって……」
「秘密。取り敢えず担ぐわよ、善いわね?」

 尋ねはしたものの返答など期待していない。わたしはさっさと敦くんを背負い、ダッシュで其の場から離れた。
 白鯨の中はまるで迷路だ。何処をどう進めばいいか判らなくなる。けれど此処で迷えば敵の思う壺だろう。わたしは適度に離れたであろう場所で敦くんを下ろした。

「敦くん、一寸触るけど大丈夫?」
「う……はい」
「御免ね。……異能力『蛍の光』!」

 ぱぁっと光が溢れ、敦くんの怪我は綺麗に消え去った。だが、今度はわたしに痛みが襲って来る。

「……っ!」
「泉さん!? 如何してこんな怪我を……!」
「だ、大丈夫よ……。君はもう痛く、ない……?」
「僕は大丈夫ですけど……。泉さん真逆僕の怪我を」
「早く行かないと……敵が来るんじゃない、かな」

 よくこんな怪我で戦っていた物だ。わたしだったら其れこそ瀕死だろうに。まだ死なない所を見るに命のキャパは超えてないようだが。
 そんな事を考えていると、近くで何かが壊される音がした。ぎくりとして二人で其方を見遣る。そこには黒い外套を纏った少年が居た。

「何をしている、人虎」
「芥川……」

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