第4章 決行。
「遅いわね、ふたりとも」
ずっと嫌な予感がしている。
朝から出て行った双子は未だ帰らない。
シャワーを浴びながらも、その不安が消えることはなかった。
ずっと嫌な予感がしている。
いつかくる「その時」が、今日である気がしてならない。
そして、そういう勘は割と当たるほうだった。
「ただいま、母さん」
「わっ」
バスルームと洗面所に隔たる曇りガラスの扉の向こうから、くぐもった息子の声が聞こえた。
「ごめんね、遅くなって」
ありさは、音もなく帰ってきた彼らが声を発するまで、彼らの帰宅に全く気がつかなかった。
「(まるで気配を消してるみたい…)」
そういえば、発せられた声がリク、ウミどちらのものなのか、聞き分けることができなかった。
いままでそんなこと、一度もなかった。
……わざと、分からないようにしている?
なにかおかしい、と気づいたときには、もう母と双子の間の隔たりは放たれていた。
「ごめんね、母さん。
少しだけ、痛いよ」