第1章 第1章
『え、待って家庭教師?』
困惑する私をよそに母は何故か嬉しそうに「そうなのよ〜」と話を続ける。
いや、全くもって母の考えてる事が分からない。
今、私はこの平和な世界で高校生として生活している。あの巨人と戦った日々は夢だったのかと勘違いする程に平和な日々を。
前世の記憶。4歳の頃突発的にそれを全て思い出した時は何をどうしたらいいかも分からずただひたすらに溢れてくる涙を止めるばかりだった。あの子はあの後生きて帰れたのか、彼はあの子に想いを伝えられたのかなとかそんなことばかり。あと皆またこの世界に生まれて幸せに暮らしているのかどうか、と。
私が思った通り知り合いが何人かこの世界に生を受けて幸せに暮らしていた。
ハンジさん、エレン、アルミン、ミカサ………
ハンジさん以外は記憶がなかったけど会えたことが嬉しくて記憶の有無はどうでもよかった。
それが3年前。
彼らとはいまでも偶に遊びに行ったりする。
ただ彼はまだ見つからない。
次々と元仲間と再開する中あの人だけは私の前に現れてくれなかった。
記憶のある仲間に聞いても皆分からない、と。
……………話が逸れちゃった
高校三年生、4月
確かに大学へ受験する学生が勉強に少々難ありなら家庭教師を雇う事も考え始めるのだろうが生憎私は家庭教師を必要とする程勉強出来ない奴では無いと思う、
高校での成績もいいとは言えないけど悪くもないと思う。行きたい大学には十分行ける成績だし。
『家庭教師なんか取る必要本当にある?私今A判定取れてるし別にいいと思うんだけど…』
「そうやって余裕ぶっこいてると後で取り返しのつかない事になるから家庭教師を雇って勉強の習慣を崩さないようにしないとって言うのが1つ目の理由かな」
いや、流石に勉強はするわ。
とツッコミをしようとしたら二言目に最早絶句せざるを得ない2つ目の理由が母の口から紡がれた。
「でね、その雇う家庭教師さんとってもかっこよくてこの辺りじゃ有名らしいからお母さんも会ってみたくて!」
あんたは会いたいが為に娘を使うのか、
心の中で盛大なツッコミを入れておいた。