第4章 おやすみのお時間です
なんでこんなに。
ハイセの笑顔は胸をぎゅーってするの。
締め付けるの。
「お嬢様」
「何よ」
「心臓、すごいですね」
「は?」
見れば。
ハイセの掌は、あたしの胸の上。
「ハイセっ」
「僕と、一緒です」
「え」
掌が誘導された先は。
ハイセの、意外にもたくましい胸板。
「え」
ドク ドク ドク
と。
ハイセの心臓の、鼓動が伝わってくる。
「なんでお嬢様の心臓、こんなに早いんです?」
「え」
シュル、と。
簡単に胸元のリボンがほどかれれば、リボンの下の空色の下地も一緒に緩んでいく。
そのまま、ボタンがひとつ、ふたつと外されれば。
締め付けるものをなくしたワンピースは、一気に肩まではだけていく。
「ちょっと、ハイセっ」
慌ててワンピースを掴み起き上がろうとするあたしの両手は、ほんとに簡単に、ベッドへと縫い止められた。
「ハイセ?」
「言ったでしょう?お召しかえのお手伝い、させていただきますと」
「…………え」
「だからお嬢様」
下ろされた前髪からのぞく右目に鋭く射抜かれると。
固まったように身体はその動きを止めた。