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愚者の詩 <D.gray-man>

第1章 想イ出





私は“ルベリエ長官のイヌ”。





長官は私に居場所と役割をくれた。

大切な何もかもがこの手から零れて落ちて、からっぽで壊れかけの

“ほんとうのわたし”

を見つけてくれた。



書類上はヴァチカン所属となっているものの、私はなんの忠誠心も信仰心ももっていない。


こんな“宗教団体”に入っていて言うのもおかしいけど、カミサマなんていないと心の底から思ってる。




だって、どんなに祈っても神様はあたしの願いなんて叶えてはくれないんだから…






からっぽでコワレタわたしになる前はちゃんと居場所もあったし、私を愛してくれる人がいた。



ファインダーの父と看護婦の母



私のお母さんは私を産んでから体調を崩し、程なく無くなってしまったらしい。

私のせいで母が死んだにもかかわらず、父は私に惜しげも無く愛情を注ぎ育ててくれた。
ただ、父の仕事の関係上育児休暇など取れるはずもなく、幼い頃から黒の教団が支援する施設に預けられ生活していた。


それでも寂しくはなかった。

父は忙しいながらも必ず誕生日や何か祝い事がある時は施設に来てくれていたし、任務で忙しく逢えない日が続く時は任務先から私の好きなお菓子や本などを送ってくれていた。




そんな何気無い、けど確かに幸せだった日々がコワレタのは私の7歳の誕生日。


── 毎年必ず誕生日には私の元へ来てくれた父が、来なかったのだ。


幼いながらに理解してしまった。


“父は死んだ”のだと





そこから私はからっぽになってしまった。



でも、周りに心配させたくないから父の死に気づいていない振りをして、優しいシスターや他の子供たちを



欺いて、欺いて、欺いて…





みんなの模範になるようなイイコに…

常に誰にも付け入る隙を与えないように完璧な笑顔で…



どんどん壊れていく私にルベリエ長官は気づいて、手を伸ばしてくれた。

──優しくてツラい、でも、とても愛おしい、私のホームから…救い出してくれた…。






長官が外でどんな評価をされているか知っている。

それでも私は嫌いになんてなれない。





壊れかけの私を見つけて救ってくれた長官のため

今日も教団で鬱陶しい視線を浴びながら

モノクロのセカイで生きている。





モノクロなセカイを生きていく。
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