第5章 仰せのままに
「蓮ちゃん…」
赤くした目で見つめてくる治さん。
「何ですか?」
「織田作が…この世界で僕は一人ぼっちだと云ったんだ」
織田作さんは、治さんの事をよく判っている。
治さんの予測を超える人はいない。対等に立てる人なら居るが、“超える”人は居ない。
「人を救う側になれって…その方が素敵だって…」
「…」
織田作さんなら云いそうだ。彼は“殺さずのマフィア ”だったのだから。
「だから、人を救う側になろうと思うんだ…だから」
「マフィアを抜ける」
一寸驚いた顔をした後頷く治さん。
「…如何なるか判らない。もしよければ、付いてくるかい?無理にとは云わない。君の意思を尊重する」
「仰せのまま。お伴します」
ハッキリ云ったと思う。
「…君の意思をと云ったよ」
「何処までも。貴方と一緒なら。私の道は私が決めます」
「…君は強いね」
マフィアを抜けるなら今すぐの方がいい。
行こうか。と云われ連れ立って歩く。
新しい世界に踏み出す。
…白さんは、この事を予感していたのだろうか?
『蓮ちゃんは蓮ちゃんのしたいようにすればいいよ。やりたい事をやって?』
羽は未だ白い。か……