第4章 衝撃の6月
「如何して泣くの?」
優しめの声色で聞いてると思うんだけど、蓮ちゃんはごめんなさいと繰り返すだけ。
「何がごめんなさいなの?教えて?…僕は怒ってないよ?」
ソファに座らせ震えている手を握ってやる。
実は結構今僕はパニックだ。
普段あまり感情を出さない蓮ちゃんがぼろぼろに泣いているのだから。
「去年とかの、誕生日は、抗争で、お祝い、出来なかったから…今年こそは、って、…でも、治さん、誕生日嫌い、みたいで、…ケーキ、作ったけど、プレゼント、全部送り返し、てるって、聞いたら、祝われたく、なかったのか、なって」
成る程、先刻の会話とその前に聞いたプレゼントを送り返してる事で僕が誕生日嫌いだと思って、祝おうとした自分が悪い事したとでも思ったのかな。
そっと溢れる雫を拭ってあげる。
「怒ってないよ。ケーキ、ありがとう」
「…でも、誕生、日嫌い、じゃ」
「何も嬉しくないし、祝う意味は理解出来ないけど。君の料理が好きで、料理の得意な君が作ったケーキなら食べるよ。ケーキ、お店屋さんのみたいだね。凄く綺麗だし、美味しそう。誕生日は嫌いじゃないよ。面倒くさいだけ」
一緒に食べよう。切ってくれる?
そう云うと鞄の中からケーキ用の大きなナイフを取り出し、綺麗に切って、お皿に乗せてくれた。
「先週から仕事前倒ししてたのって」
「ケーキ、ここで作ろうと思って」
前々から計画していたって事か。
可愛いなぁ。と思った。
頭を撫でつつ褒めてあげる。
「甘いの控えめにしてくれたんだね、これなら食べやすい。ありがとう、嬉しいよ」
「誕生日、以外でこれから作ります…」
「…うーん、誕生日以外でも作って欲しいけど…」
君にお菓子を作ってもらえる口実になるんだったら誕生日も悪くないよ。
6.19 Osamu.D Happy birthday...