• テキストサイズ

人生は常に事件に満ちている【コナン】

第4章 ちいさな彼女 【灰原】


怪しい薬で身体が縮んでしまった親友、工藤新一の実家前に、郁大は佇んでいた。鞄の中を漁り、それが無い事を再び確認して肩を落とす。
(やっぱり鍵忘れてるな…仕方ない、博士に借りるか)
せっかくゆっくり本を読みに来たのだ。このままただ帰るのは御免である。郁大は隣の阿笠博士の家のインターホンを鳴らした。
「…?」
ピンポーンと2、3度押してみても出てくる様子が無い。博士の愛車であるビートルはそこにある。近所に出掛けているのだろうか。ふと思い立ってドアノブに手を掛けて見れば、それはすんなり動いた。
「……」
不用心な、と思いながら郁大は家の中へ足を踏み入れた。途端、話し声が耳に入る。奥のソファには見慣れた二人が座っていた。
「なんだ、いるじゃないか。インターホン慣らしても出てこないのに鍵開いてるからどうしたのかと思った、ぞ…?」
「おぉ、郁大くん。すまんすまん、つい話し込んでおってのう」
博士の返答を、郁大は意識半分できいていた、彼の視線はコナンの正面に座っている、コナンと同じ年頃の、赤みがかった茶髪の少女に向けられていた。
「…孫、ではないんだよな」
「こっ、この子はじゃな、灰原哀くんといって、わしの親戚の子で…」
「そういう下手な嘘は俺には通じないってわかってんだろ」
「そうだな」
あっさりと同意したのは慌てふためく博士ではなくコナンだった。彼はそれ以上は何も言わず、じっと郁大を見上げる。郁大もコナンを見、そしてずっと黙ったままの少女に顔を向けた。警戒、もそうだが、どちらかというと壁を作っているような瞳。郁大は彼女の前にしゃがみ込み、目線を合わせた。
「俺は鴉羽郁大。あいつのダチだ。君は?」
「…今博士が言ったのをきいてなかったの?」
初めて聞いた彼女の声。声色も、言葉も、小学校低学年生のものとは思えない様なもの。
「君の口からききたいんだよ。君の、本当の名前をさ」
「!!」
少女の目が見開かれた。そしてその驚愕の表情のままコナンを見る。彼は肩をすくめてみせた。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp