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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第14章 そのカクテルの名は 【ウォッカ】


カラン、とベルの音を立ててドアが開かれた。入って来た男にマスターが「いらっしゃい」と声をかける。全身黒ずくめにサングラスの体躯のいい男は、軽くきょろと辺りを見渡した後、カウンター席に座った。
「待ち合わせかい?」
「いや…」
「そうか」
一般人には見えないがなぁと思いながら、マスターは奥の方に向いて、大きな声を上げた。
「三葉ちゃーん」
「はいよー」
ピク、と男の肩が揺れたのを、マスターは見逃さなかった。なるほどこの男も彼女目当てか、と相変わらずの看板娘の人気さに感心する。少しして、呼ばれた女がカウンター内に出てきた。真っ赤に染めた髪は一部に刈り込みが入っており、セミロングの長さが揺れる。彼女の登場で周りが少しざわついた。彼女の深い青の瞳がマスターの先にいる男を捉えると、その目がぱちっと開かれ、口元には笑みが浮かんだ。
「なんだよ!来るなら先に言えよ!」
「す、すいやせん」
「うん?三葉ちゃんの、知り合いかい?」
マスターが目をぱちくりさせ、三葉と男を交互に見る。三葉はふふんと笑って、男と目線を合わせるように彼の前に肘をついた。
「アタシのイイ人だよ。なー?」
「は、はい」
三葉の言葉に男が同意すると、周囲でいくつもガタッと音がした。このバーで三葉は人気があり、恋愛としての好きではなくても、好感を抱いている者は数多い。殺気さえとんできそうな雰囲気で、男はただ三葉を見ているしかできなかった。
「あぁ、お前さんが三葉ちゃんの噂のいい人だったか。三葉ちゃんがベタ惚れのようだったから、どんな美丈夫かと思ってたんだが」
マスターだけは腕を組んでしげしげと男を観察している。三葉がイケメンに目が無い事は男も重々承知で、そう思われていることは仕方がないだろう。
「アタシが面食いなのは確かだけど、それとこれとはまたちげぇし、コイツはそんなの関係ねぇくらい男前なんだよ」
「この感じだもんな」
のろけを聞いたマスターが肩をすくめ、男の背後で睨みをきかせている連中に目を向ける。だからお前達は大人しくしていろ、と言わんばかりに。マスターの視線でしぶしぶ席に座る男達を、三葉は楽しそうに見ていた。
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