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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第12章 緋色の和解 【安室】


十華は、ポアロの前にいた。この時間はもう閉店場際である。スッとひと呼吸して、十華はそのドアを開けた。
「すみません、もう閉店で…」
出迎えた男はそこで止まった。十華の姿を見て軽く目を瞠っている。ドアを閉め、彼女は彼を真っ直ぐに見た。
「このお店、〝そういう類のもの〟は?」
「…僕がチェックしているのでありませんが」
「君自身には?」
「さすがに何か事を起こす時以外にはつけられていません」
「そっか、良かった」
何が、と問おうとした安室だったが、十華のその、嬉しそうな表情を見ると声が出なかった。そして十華は笑みを浮かべて彼に言った。
「話をしに来たの。いいかな?〝零くん〟」
「っ…」
彼女の声でその名が呼ばれると思ってもいなかった安室は、しばし声を失ったのであった。







ドアにCLOSEの看板をかけてカーテンを閉める。薄暗くなった店内で、二人はコーヒーカップを挟んで向かいあっていた。
「さて、どこからどう話したものか…ききたいことある?」
「…話をすると言いながらそれですか」
「ちゃんとまとめてくればよかったわねぇ」
言って十華はコーヒーを口にする。「うん、美味しい」とこぼすその表情は、ポアロの常連客姿そのもの。彼女は少しその水面を見つめたあと、そうね、と繋げた。
「とりあえず昨日の事からかしら」
「貴女もあの場にいたと…?」
「私はむしろ、君に近くにいたわよ」
「え」
安室が驚愕に目を瞠った。
「君が部下を連れて乗り込んできた時のために、すぐ近くの部屋にスタンバってたの。そうならないでくれて、良かったけど」
「そう、だったんですか…。…ボクの名は、赤井から?」
「それもあるけど、昨日の通話を盗聴してたのと、私も君が公安の人間だって、思ってたから」
「…」
安室は十華の言葉を黙って聞いていた。
「確信したのは一昨日ね。ゼロってあだ名と、〝僕の日本から〟ってとこ。組織の行動範囲は世界規模だし、それなら日本にこだわることもないよねって」
「…さすがですね」
ふ、と安室が苦笑をこぼした。観念したと言うように肩をすくめてみせる。
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