ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第2章 ハンサムな彼
仮面舞踏会でまたハンサムな彼を見掛けた。
いくら仮面をしていても、その身体から発せられるオーラで
すぐ彼だとわかった。
相変わらず目立つ人だと思いながら、私はいつものように
ダンスに誘われないように人気のない場所を目指した。
仮面舞踏会も終盤に差し掛かった頃、私は驚愕した。
驚いた事に彼は泥棒だったようだ・・・。
人目を避けて屋敷の奥まった所に行ったら、
彼が鍵の掛かった部屋に入ろうと解錠している場面に
出会してしまった。
どうしようかと思ったけど、彼は私に気づいて無さそうだし、
そのまま隠れて観察する事にした。
私は初めて彼に興味を持ってしまった。
久々に味わうスリルに眠らせていた感情が熱を帯びて
起こされていく感覚を味わう。
彼は何を盗みたいのだろうか?
このまま彼に見つかってしまったら殺されてしまうのだろうか?
そういえば彼の素性は知らないけど、
何か商売を始めたくて資金集めをしているのだろうか?
一度芽生えてしまった興味は底を尽きること無く、
無限に湧き出てきそうで思わず苦笑する。
あ・・・私今笑った・・・?
私にまだ感情があったなんて、今日は驚く事だらけだ。
これもあのハンサムな怪盗に感謝すべきなのかもしれない。
笑ったのなんて五年振りな気がする。