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ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】

第2章 ハンサムな彼





「助けてくれて、ありがとう。
・・・だが、何故私を助けた?」


最後の方の声色には有無を言わせない響きがあり、
その威圧感に彼はただの泥棒では無さそうだと思ったが、
今はそんな事よりも何と答えるべきか悩み口を噤む。

馬鹿正直に事実を言うべきか、適当にはぐらかすか・・・。


グルグル悩んでいたものの、この男に嘘を言っても
すぐバレそうだなと直感的に思ったので、意を決して
振り向き、真正面から対峙する。


「人を助けるのに、理由が必要とは知りませんでした」


ニッコリ微笑みながら皮肉ると、彼の太い眉が僅かに
寄せられたのがわかった。


「・・・というのは冗談です。私が貴方を助けたかった
・・・ただ、それだけなのですよ」

「助けて頂いた事には感謝している。だが、
その助けたかったという理由が知りたい。その・・・君は
私が何をしていたのか見ていたのだろう?
あんなタイミング良く現れた事を考えれば、
そういう結論に至る。だからこそ疑問に思う。
それを見ていたのに、君が私を助けた本当の理由が・・・」


彼の真摯な眼差しを受けていると、
はぐらかすのは失礼だなという思いが強くなる。

自分が彼を助けたのは本当にくだらない理由なのだ。
自嘲的に笑うと、私は彼の知りたい本当の理由とやらを教えた。


「貴方にお礼をしたかった・・・」

「・・・お礼?」

「えぇ・・・今まで私は人形のように感情が持てないで
いました。ですが、貴方が泥棒しようとしているのを見て、
久しぶりに面白いと感情が蘇ってきて、何故だか笑いも
込み上げてきて、見えていた景色がモノクロから
色づいたものになって・・・上手く言えないんですけど、
私が感情を取り戻す切欠をくれた貴方をどうしても
助けたかったんです」

「・・・・・・・・・」


彼は探るように私の顔を見ていたけど、
少しすると呆れたように深く溜息を吐いた。




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