第2章 恋
始業式以降、今までなにが怖かったんだろうというくらいに、私は頻繁に学校に行けるようになった。
教室に毎日行けているわけではないけれど、少なくとも毎日学校に通ってはいた。
「おはようございます」
「おはよう、今日ももなちゃんが保健室一番乗り」
「やった」
「嬉しいんだ?」
私が笑顔を向けると、伊野尾先生は優しく微笑んだ。
教室に行くのがちょっと怖いというときは、保健室に行くことにしていて、そこに関しては薮先生とも相談済みだ。
出席日数も一応これで補えるのかな?
それは後で聞いておくとして、最近は教室に行く回数が徐々に増えてきてはいるものの、休み時間の多くはここで過ごしているため、伊野尾先生との距離の縮むスピードが異常にはやい。
これは私ではなく伊野尾先生のコミュニケーション能力が高いおかげだと思う。
去年まで“先生”という存在が恐怖でしかなかったのに、今はこんなに気楽に話せる存在になってきている。
伊野尾先生だけでなく、担任の薮先生や伊野尾先生に会いに来る有岡先生とも話せるようになってきた。
だから、私が学校に来る理由のひとつは、伊野尾先生とおしゃべりがしたいということ。
もうひとつは山田くんとおしゃべりがしたいという理由だけど、これはまだ夢のまた夢だから、今は伊野尾先生に会って楽しく会話をするだけで十分満足している。