第9章 お尋ね者
そこには紛れもなく桂さんの顔が描いてあった。
指名手配、桂小太郎。と名前も書いてある。
『うそ………』
ももは驚きを隠せず黙り込んでしまう。
トントンと肩を叩かれ振り向くと。
エ「大丈夫。悪い奴ではない」
『いや悪い奴じゃない指名手配犯って
いる!!??』
エリザベスが慰めてくれるが、
銀色の髪の男が、くっくっと笑いを堪えている。
男「まああれだ、仲良くやれよ。俺には関係無いからな。せいぜい頑張って逃げろ」
男は背中を向け、手をヒラヒラとさせながら
去って行った。
『はあ……、そんな、助けてくれた相手がお尋ね者だったなんて……』
(しかも一緒に…)
今朝、桂の腕の中で目が覚めた事を思い出してしまう。
(いやいや、別に一緒の布団で寝ただけだし、何かした訳じゃないし。早めに仕事でも探して出て行こう!)
とりあえずお世話になった御礼に、晩御飯の用意はする事にした。
(……あれ?エリザベスがいない)
一緒に帰宅した筈のエリザベスの姿が見当たらなかった。
(どこ行ったんだろ、まいっか)
桂さんが帰ってきたら、一言御礼を言って出て行こう。まだ行き先は無いけど、指名手配犯と一緒にいるなんてまずい。もし捕まりでもして私の素性がバレたら、吉原に引き戻されてしまうかも知れない。
………………………
何時間待っても桂は帰ってこない。
エリザベスもあれっきり帰って来なかった。