第9章 初仕事
~うずまき~
「すンませんでしたっ!」
谷崎が敦に向かって頭を下げた。
「へ?」
「その試験とは云え随分と失礼な事を。」
「ああ いえ良いんですよ(意外と良い人だこの人)」
「何を謝る事がある。あれも仕事だ谷崎」
「国木田君も気障に決まっててしねぇ」
と言って太宰は国木田の真似をした。
「『独歩吟客』」
「ばっ…違う!あれは事前の手筈道りにやっただけで」
「ぷっ!」
「ユウリ!お前も笑うな💢」
「ボクの名前は谷崎潤一郎。探偵社で助手のような仕事をしてきます。それでこっちは」
谷崎は傍らのナオミを指さす。
「妹のナオミですわ!」
と谷崎に抱き付く。
思わず戸惑う敦。
「きょ兄弟ですか?…その割には、髪や顔がそんなに似ていないような……」
「あら、お疑い?」
ナオミは谷崎のシャツの中に手を入れ直に肌をいとおしそうに撫でる。
「もちろん、血の繋がった実の兄妹ですわ。と・く・に・♥️この辺なんて本当にそっくり♥️♥️」
「………………」
「いや、でも……」
横から国木田が助言をした。
「こいつらに関しては深く追及するな。」
「あ、はい」
敦、空気を読む。
「ともかくだ、小僧。貴様も今日から武装探偵社が一隅、ゆえに周りに迷惑を振りまき、社の看板を汚す真似はするな」
黙って聞く敦。
「俺も他の皆も、そのことだけは徹底している。なあ、太宰、ユウリ」
「国木田君、治全く聞いてないよ」
太宰はユウリの横で給仕の女の子を見てうっとりしていた。
「か弱く華奢なこの指で私の頸を絞めてくれない-」
「云ってる側から社の看板を汚すな!貴様と云う奴はいつもいつも彼女の手を借りるまでも無いわ!俺のゴツイ指でお前の頸を絞めてやる。」
と治に掴みかかる。
呆れる敦にユウリは
「二人見たいにならない事をオススメするよ」
「ですよね、はぁ……」
社の看板を汚している二人の先輩社員であった。
「それから、敦君。良い忘れてたんだけど私の事、皆みたいに下の名前で呼んでもらって良いから。」
「え、良いんですか?」
「うん、名字で呼ばれるとなんか距離感じちゃうんだよね。」
「分かりました、ユウリさん」
「うん」
そうして、ユウリは視線を二人に戻した。