第1章 マフィアにて
ある日、横浜の街を紗希が歩いていると、見慣れた夕日色の髪が目に入った。
(中也じゃん)
彼女の想い人である。
そして互いに両思いであった。
もっとも、彼女には両思いである相手はもう一人いるのだが。
(こんな夜遅くに歩くっていう事は、マフィアの任務かな?)
普段は家でしか会わない紗希にとっては彼の外での様子は興味が湧く。
そこで紗希は少々危険を伴うが、中也の跡をつけることにした。
彼は大通りから狭い路地裏へと入り、しばらく進んだところで立ち止まった。
「だれだ?俺のことつけてンのは?」
気づかれていた。
まあしょせん素人の尾行だ。その手の道をくぐってきた中也にはすぐにわかったのだろう。
紗希は申し訳ない気持ちを感じながらも、おそるおそる中也の前に歩み出た。