第1章 初めての恋文
ぬし様
ぬし様、お帰りなさいませ
残念ながらこの小狐、ぬし様がお戻りになられる頃には遠征に参っている事でしょう
故に、ぬし様に文をと、筆をとりました
ぬし様が居られぬ間
寂しくて寂しくて、私はどうにかなってしまいそうでした
ですが、その寂しさを糧に
ぬし様にお喜び頂こうとこの小狐、毛艶を整えておきました
遠征より戻りましたら、ぬし様
もふもふ致しまするか?
ぬし様の為の小狐で御座いまする
幾らでも、ぬし様のお側に置き、愛でて下さりませ
ぬし様、私はぬし様に触れて頂く事が何より嬉しいのです
ぬし様の柔き手に触れて頂くと、心鉄が鼓動を打つのです
そう、まるで人の恋情の様に
胸が苦しいのです
それは、頬が緩む程の愛しき苦しみ
ぬし様
ぬし様は決して小さくは無い、小狐をどう思われまするか?
ぬし様
もし、私がぬし様を好いていると申したら
ぬし様は、喜んでくれまするか?
小狐丸