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覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】

第2章 カウンセリング



「あ、櫻井さん、こんにちは」

「こんにちは…」


病院の一室に入ると白衣を着た男性に出迎えられる

いわゆる病室のような白い部屋では無く温かいオレンジ色の照明の部屋には、茶色いローテーブルを挟んで1人がけのソファが2つ置いてある

その1つに座ると“櫻井翔”と表紙に書いてあるファイルを開きながら向かい側に男性が腰かける


「じゃぁ始めますね?」




あの病院に運ばれた日の雅紀の心配ぶりは凄かった


本当は昼食を食べられていなかったんじゃないのか?
夜しっかり眠れていなかったんじゃないのか?
耳鳴りや頭痛にずっと悩まされていたのか?

様子を見に来た看護師に止められるまで質問攻めにあった


そんな雅紀は大丈夫という俺の意見は聞かずに勝手にカウンセリングを申し込んでいた

心配してくれていることは分かっているし、俺も思い出せるなら思い出したい

何よりこれ以上俺の事で雅紀を泣かせたくない


なのでとりあえずカウンセリングを受けることにした



俺の担当になったのは心理カウンセラーの二宮和也先生だった

二宮先生は俺の2つ年下らしいが見えないくらい童顔で、柴犬みたいな可愛い顔をしている

初めて会った時、俺を見て少し驚いたような表情をしていたがすぐににこりと笑った


てっきり耳鳴りや頭痛、“声”について色々と聞かれるのかと思っていたら、幼い頃の話や雅紀について聞いてくるだけだった

何故だか二宮先生と話していると落ち着いてきて、何も考えなくても次々と言葉が出てくる


「この前は相葉さんについてたくさん聞きましたから、今日は櫻井さんのこと聞かせて頂いても良いですか?」

「俺のこと、ですか…?」

「はい。何でもいいですよ、仕事のこととか趣味のこととか…」


二宮先生の聞き方は決して強制ではない

自分の話したくないことは話さなくても良い、と言われているようで安心出来る
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