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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第1章 雨の日に赤い傘が落ちる


中学1年生の夏、台風直下で外は大雨だったが、私の未来は太陽さんさん、順風満帆といってよかった。


あの時まで。



私、天使羽奏(あまつか わかな)は中1の時点で身長148㎝で、同年代の女子の中でも低い部類だ。
でもって全日本女子バレー代表だから、自分のポジションである他のセッターはもちろんのこと、チームメイト、対戦相手のリベロすら私より大きい。スピードやバネはあるから、ジャンプすれば高いボールにも届くけれど、どうしたってネット際のせめぎ合いは苦手だ。周りより一回りふた回りも年齢が低いことも相まって、代表入りした小学6年の頃は、ひたすら技術をあげようと無茶な練習をして、膝を故障しかけて、監督や仲間やらに怒られたりもしたのだけれど、自信も付いて、自分らしいプレーが出来るようになった。

付いた異名は……何度聞いても恥ずかしい、ので言わない。

世界大会準々決勝、準決勝。相手は優勝候補の中国、アメリカと2連戦だった。
最近の女子バレーの強豪と言えば、ブラジルとアメリカ、中国の三つ巴で、正直な話、日本が中国、アメリカを破って決勝カードに残ったのは大番狂わせだ。反対側のブロックでは、順当にブラジルが決勝に駒を進めた。
対ブラジルの決勝を明後日に控え、チームの士気も上々だ。

東京開催の会場に、宮城から応援に来てくれたお父さんとの喧嘩の理由は、大変下らないことで、今となっては何がきっかけだったのかさえ覚えていない。
兎に角、ミーティングも終わって夜に差し掛かった頃に喧嘩してしまい、大雨の降る中、私は傘一本持って宿を飛び出した。


滅茶苦茶に走ったせいで上がる息、傘を差していても服は濡れて気持ち悪い。
視界の先に、私と同じように傘を差した幼馴染を見つけて、目があって、駆け寄ろうとして、いきなり横方向から思い切り突き飛ばされた。
肩への衝撃。
ヘッドライトが、パアァッと目に痛くて、私の持っていた真っ赤な傘が吹き飛ばされて、落ちた。
叩きつけられた地面に、ヘッドライトに照らされて、傘の赤が広がっていく。
上に重みを感じて瞬けば、ジャケットをぐしょぐしょに濡らしたお父さんが覆いかぶさっていて、何故か歪む90度回転した視界に、大切な幼馴染が駆け寄ってくるのが見えて、




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