第11章 珪線石の足音

「ん〜〜〜ストレス！ストレス、リアちゃん、分かりますか？ストレスです！！」

『そうなんだ』

「他人事みたいに言わないで〜！？君すぐ味覚と睡眠に影響しちゃうんだからそれ」

『だってリアじゃどうしようもないもんこんなの』

「誰が原因なの今回は、中也君じゃあないでしょう？」

『…………おにぃちゃん』

「あー……ああ〜………………えええ？“あの”御狐神君が、どうしたの？？？」

『他の子のシークレットサービスになるためにうちに来たの見ちゃった』

いつもの事だけど、と付け足した彼女ににっこりしたまま、冷や汗をだらだらと流す首領。

「話は？」

『気付かれる前に出てきたよ』

「一言もかい！？だって君達何年ぶりの再会で＿＿＿＿」

『だってリアがいたって邪魔でしょう？』

俺の膝の上でにこにこしているそいつになんと言葉をかけていいか分からずに、撫でるしか出来ないこの状況。
首領は何か知っているようだがリアが俺に話したがらないし、それに本人のスタンスが“こう”なのだ。

恐らく俺をストーキングしていた時期も同じように色々と溜め込んでいたのだろう、ここまでではないにせよ。

「そんなことないって、一言くらい何かお話してみなよ！？御狐神君リアちゃん超大好きだから大丈夫だって！！」

『だったら最初からリアの傍にいてくれるでしょ』

「あああもう、君達ほんと似たもの同士なんだから……挨拶くらいしてみようよ？絶対大丈夫だから」

『挨拶って、向こうは覚えてるかも分からないじゃない。はじめましてって言ったらいいの？』

「リアちゃん」

『だってあの人の妹なんてこの世にもう存在してないし』

「ここにいるでしょう」

『別物ですよ、“白縹 リア”とか知らないでしょ』

じろ、と首領から目を向けられて首を傾げると、あからさまに溜息を吐かれてしまう。

「中也君にもまともに話してないからなんじゃないのかい」

『仕方なくないですか？一応私にも乙女心ってものがあるんですけど。一応』

「一応も何もおまえは乙女過ぎるんだよ」

『やだ中也さんったら褒め上手』

心にもなさそうなノリで返されてしまった。

「とりあえず原因の改善が最優先だよ、中也君についててもらってでもなんでもいいから、一度きちんとお話してきなさい」

『リアのことなんか知らないってされたらどうしたらいいの？』