第11章 珪線石の足音

「なあリアちゃん」

『んー』

「リアちゃんよ」

『ん』

自身の家に荷物を取り替えに行ってからというもの、なんというか、覇気が無い。
落ち込んでいるのか、はたまた元気がないのか……いずれにせよここ何日か共に過ごした俺には分かる気がする。

「何かあった？」

『強いて言うなら失恋？』

急ブレーキを踏んでは？と彼女の顔を見ると、けらけら笑って面白がっている。
こいつ、誤魔化してやがるな。

『そんなわけないじゃん、そういうの分かんないしリア……あー面白』

「リア、もう一度聞くけど何かあった？」

『……別に、いつもの事だよ。慣れてるもん』

「何が？言えるか？」

『………………リアが好きになった人達ってね、結局リアじゃない誰かのことが一番大事なんだなあってまた突きつけられてきただけ』

それだけだよ、とこちらを見向きもせずに言った声はどこか寂しくて、背中が更に小さく見える。

「センチメンタル？」

『慣れたってば、毎回そうだし』

「俺はリアちゃんが一番大事だけどな」

『……言ってれば』

家に連れ帰って先に入浴させ、飯を振る舞うも……食欲が、無い。

「無理して食うなよ？食えるタイミングで食えばいいんだから」

『………味わかんなくなっちゃった』

「それ、味覚が……ちょっ、首領に診てもらうぞ」

『平気だよ、いつもと変わらな「平気なわけないだろ、おまえどんだけ溜め込んでる」ええ、だからいつもと一緒なんだってば』

「ガチで失恋したとか言わねえよな？相手誰だ」

『……おにいちゃん』

は？と言いかけて、声を抑える。

「兄貴？おまえ兄貴がいたのか」

『って、リアが一方的に思ってただけの人』

「……悪いリアちゃん、もうちょい詳しく」

『どっか行っちゃったの。どこ行ったのか探されたくもなさそうで…………リアのこと置いてってね、他の女の子の為に戻ってきたんだって』

「どういう……？」

『リアなんてほんとは眼中にも無かったんだよ、いつもそうだけどさぁ……だったらいい顔しないでほしいよねえ、信じた方が馬鹿を見るんだから』

にこにこしているのが、一番まずいと思った。
そんな顔させちゃいけねぇだろ、なにやってんだよ。

『…………はやく中也さんに会いたかったの』

「いくらでもいろよ……もっとこっち来い」

今日は、いつもより一人にしちゃダメだ。