第11章 珪線石の足音
抱き寄せられて読み取った心境としては、どうやら以前、あの件の後に女性相手だというのに実力行使にまで出たそうで、かすり傷を負わせた上で最下級構成員にまで降格させたそう。
自身の管轄からは完全に除籍した上、後のない状況にまで追い込んだようだ。
更には二度と私の視界に入るなと宣告を……この人ほんとどこまでしてるんだか。
「おまえビッチだったのか?」
『そうなんじゃない?』
「そうかそうか、俺に構われるのに忙しいリアが他の誰に構う暇があるんだろうなあ?」
『中也さんの財布とってきたのがダメなんだって』
「そ、そう!!そうの、その子は中也さんの財布を盗んでッ」
「るっせぇぞ、俺が俺の財布をリアが好きに使えるように置いてくのなんか当たり前だろうが」
間を置いてから、は?と言いたげな間抜けな顔をして、彼はあちらに殺気を飛ばす。
村上さんと篠田さんは私の方にやって来て隠れ始めるのだが、冷や汗を流しているようだった。
「俺が、俺だけが首領に用事があってこいつを一人にするのに?財布が無ぇと心配だろうが」
「えっ、いや、なんで」
「リアがいつ腹が減ってもたらふく食えるようにに決まってんだろ、馬鹿か」
『中也さんその過保護は私でもどうかと思う』
「今日は何が美味かったんだ?」
『オムライス♡』
「良かったじゃねえか、ちゃんと腹いっぱい食ったか?」
『んーん?』
「食事を邪魔されたのか、そうかそうか」
こじつけが過ぎる気もするが、あちらはもう立っていられないほどの恐怖を感じているようで、腰を抜かしてガタガタと震えていらっしゃる。
「まあ別に金に手つけようが何しようが、リアなら大歓迎だけどな〜?♡」
『車爆発させるのとかも?』
「車に細工でもして俺の命でも狙われてたんだろ、さすがリア」
『マンション燃やすとか』
「俺の足がつかねぇように気利かせてくれたんだなあ♪」
『あの、我ながらその発想はどうかと思う』
「でもおまえがするなら全部俺か自分のためじゃねえの。そういうことなら何も怒らねえよ」
割と本気でときめいてしまって我ながら末期であると自覚する。
この人私の事信頼しすぎじゃない?
「つーわけでリアちゃん、数分だけ待っててくれるかあ?俺は塵芥を処分しなくちゃならねえから」
『……さわるの?』
「そういうことなら触れずにするさ」