第9章 蛍石の道標
「リアちゃんほんと純粋だぁ、おい村上、リアちゃんに飯奢りな」
「なんで俺がだよ」
「飯とか、ここでとるならだいたいいつも中也さんのカード盗んできてるから大丈夫だろ」
『…あ、忘れてた』
「お前の最大執着は食なのに大丈夫か?ほんっと大丈夫か???」
本気で心配された。
ぶん殴るわよ。
『い、いいや…お、お昼…一緒、食べるらしいか、ら』
「…やけに嬉しそうだな?」
『……中也さんの方から、言ってくれて…♡』
「かんわいい♡お昼ご飯デート誘ってもらって嬉しいんだ〜??♡」
『で、デート、?デートでいいのかな…??』
「デートでいいですよ?お嬢さん」
ぽん、と頭に乗せられる何か。
そして響いてきた声に、心臓が掴まれる。
振るわされた耳が熱い。
期待する彼の姿に、頭の中までふわふわして。
「…中也さん、その包みなんすか」
「愛妻宛の弁当。重箱十五段」
「十五段て…てか愛妻!?妻!!?」
「近々籍入れっから…銀がいただけまだいいけど、あんまうちのリアちゃん、野郎ばっかで囲んでんなよ?」
やけにいい笑顔で言う彼に、男四人が揃って苦笑い。
『…中也さん、あの』
「なに、俺が戻ってきて嬉しい?」
『ッ、〜〜〜!』
恥ずかしさが募りに募ってどこにもやれなくて、彼の腹部にぐりぐりと抱きついて…尻尾を出す。
「あ、おいリア、お前村上と篠田といんのに」
「…は?尻尾??」
「いやいや村上、多分幻覚。耳とか見てないし尻尾とか見えないし」
「あー…悪いな二人とも、幻覚じゃねえ上にれっきとした耳と尻尾だ。触んなよ、俺の子狐に」
「「説明を下さい…」」
先祖返りというもの自体の説明から始めて、広げた重箱からご飯を取って食べていく。
「まあつまりその先祖の妖怪の中に狐の妖怪がいたってもんで、変化して狐にもなれちま…あ、こらそんなずっと食べてばっかじゃ体によくないだろ。水ちゃんと飲め」
「篠田、お前あれ何に見える?」
「え、ごめんもう子狐にしか見えない何あの子可愛い…」
「そっちじゃなくて中也さんの方」
「………保護者?」
「聞こえてんぞ手前ら」
はあ、と軽く息を吐いて、それから。
「保護者…になったつもりでもいるけど、結論を言おう。俺はリアのシークレットサービスだ」
「へえ、中也さんがシークレットサービ…ッんん!!?!?」