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ハリー・ポッターと闇の姫君

第8章 【対戦校のお出迎え】


 クリスは早朝、と言うより寝付けなかったので徹夜明けと言う方が正しいが、とにかく目が冴えて仕方なかったので昨日の夜やり残した『占い学』の宿題をしようと談話室に下りて行った。
 すると『太った婦人』の肖像画から誰かが入って来たのが見えた。――ハリーだ。ハリーもまさかこんな朝早くクリスに出会うなんて思わなかったのか、少し驚いた顔をしていた。

「や……やあ」
「うん、お早う」
「早いね、こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと眠れなくて……ハリーこそどうしたんだ?」
「僕は……シリウスに手紙を出してきたところだよ」

 ハリーはばつが悪そうに下を向いている。こう言う時、ハリーは絶対に何か負い目を感じている時だ。クリスは昨日の『占い学』のレポートが残っているテーブルに腰掛け、ハリーにも座るように勧めた。

「ハリー、手紙になんて書いたんだ?」
「シリウスに、傷が痛んだのは気のせいだから、ホグワーツに戻ってくる必要はないって」
「……嘘だろう?それ」

 ハリーは下を向いたまま黙っていた。唇をキュッと噛みしめ、拳を力いっぱい握っている。まるで今にも泣き出しそうなハリーに、クリスは安心させるように、握りしめた拳をそっと両手で包み込んだ。

「なあ、ハリー。何をそんなに心配しているんだ?」
「…………」

 掌から、ハリーが震えるのが分かった。きっと不安なんだ。もし自分の所為でシリウスが捕まるようなことになったら、どうすれは良いのかと。
 シリウスは血こそ繋がっていないが、ハリーの唯一の肉親と言っても良い。そのシリウスが自分の所為でまたアズカバン送りになったら、ハリーも正気ではいられないだろう。
 クリスはよりいっそうハリーの手をぎゅっと握りしめた。

「大丈夫、シリウスもそこまで馬鹿じゃない。それにシリウスが『アニメーガス』だって知っているのは私達4人とダンブルドア先生だけだ。犬の格好をしている限り平気だって」
「でもっ!!」
「大丈夫だ、ハリー、安心しろ。自分の名付け親を信じるんだ。シリウスはそれほど馬鹿じゃない」
「だけど……」
「ハリー、全てを1人で背負いこもうとしないでくれ。私達はいったい何の為にいると思っている?」
「うん……そうだね。ありがとうクリス」
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