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ハリー・ポッターと闇の姫君

第6章 【許されざる呪文】


「貴様、よっぽど痛い目に遭わないと分からないらしいな!」
「ど、どどどどどうしたんだよクリス!?」
「煩いっ!ロン、お前も同罪だ!!」
「な?何で僕が?」
「一旦落ち着こう、ね?」

 あわててハリーが間に入った。丁度その時、大広間の出入り口の穴からハーマイオニーがよじ登って現れた。何があったのかは分からないが、クリスが問題を起こしたのは理解したらしい。ハーマイオニーはクリスの肩にそっと手を落いた。

「クリス、貴女が何を怒っているのか教えてちょうだい」
「………………」

 クリスは押し黙った。ドラコに対するこの感情を、どう表現していいのか分からなかった。
 情け?同情?それとも友情?そのどれもが当てはまるようで、どれもが違う気がした。クリスはそっとハーマイオニーの手を退けると、静かに女子寮への階段を上って行った。

「何があったの?」

 ハーマイオニーが問うと、ハリーとロンは分からないと言う風に肩をすくめた。

 クリスは自分の部屋に着くと、身体をベッドに投げ出した。そう言えば『占い学』の宿題が残っていたが、今はとてもやる気になれない。クリスは力いっぱいシーツを握った。
 感情が渦を作り、身体中で暴れまわってはち切れそうだ。

 クリスはギュッと目をつぶって、召喚の杖を抱きしめた。ほのかに温かいこの杖に触れると、不思議と心まで溶けていく様な気がする。まるで本物の母様に触れている様な、そんな気さえする。温かい――昔から変わらないこの温かさだけが、クリスの心の慰めだ。

 ふと左手を見ると、1年前ドラコに貰った指輪が光っている。少なくとも、この指輪は『クリスが欲しがったから』贈ってくれた物だ。決して『許婚だから』ではない。確かにあの時そう言ってくれた。
 だけど今度のクリスマスに行われるパーティには『許婚だから』と誘って来たり、正直ドラコの気持ちが分からない。ドラコは自分をどう思っているんだろう。友人……家族……許婚……そのどれかか、それともその全てか――。しかし自分は?自分はドラコをどう思っているんだろう。
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