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ハリー・ポッターと闇の姫君

第1章 The summer vacation ~Remus~


 洋服を手にした時、屋敷しもべはその屋敷を出ていかなければならないのだ。だからどんなにきつい体罰や仕事が待っていても、住処を失いたくない屋敷しもべ達は文句ひとつ言わず従うのだ。

「他に何か面白そうな本は無いかなぁ……ん?これは何だ?『彼方からの物語』か。裏に『ばーこーど』があるって事はマグルの本か」

 パラパラッとページをめくって、中身を確認する。どうやらマグルの書いた『ファンタジー小説』の様だ。クリスはマグルの書く小説が好きだった。マグルが実際に居るとも知らない魔法族の事を、一生懸命想像を膨らませて描いた物語には、どこか惹かれるものがある。
 クリスは、今日はこれを買おうとした。が、この小説の背表紙に上と書いてあり、隣に中と書いてある同じタイトルの小説はあったが、下巻が見当たらない。クリスは店主に声をかけた。

「おーい、じいさん。これの下巻って無いのか?」

 しかし店の主である、通称ジェフじいさんは、かなりの高齢で耳も遠ければ、店番中にこっくり、こっくりと居眠りばかりしている。今日も午後の窓からさす、天気の良い日差しの下、カウンターのイスに座って居眠りをして全くクリスの話しを聞いていない。クリスはムッと意地になって声を張り上げた。

「おい!じいさん、ジェフじいさん!!起きろって、客が来てるんだぞ!じいさん、おーい!!」
「しー、クリス。折角寝てるんだから、もう少し寝かせておいてあげようよ」

 背後から優しい声が聞こえたと思って振り返ると、そこにはなんとクリスが恋い焦がれて止まない、ルーピン先生が立っていた。途端にクリスの顔が真っ赤になり、持っていた本を落としかけた。

 ルーピン先生は、去年クリスが3年生の時ホグワーツ魔法学校に『闇の魔術に対する防衛術』の先生としてやって来た人だ。学校へ向かう最中、ディメンターと言う恐ろしい闇の生物に襲われかけた時、助けて貰って以来、クリスは恋に落ちてしまった。しかし、先生が『狼人間』だと言う事が全校生徒にバレてしまい、先生は学校を辞めざるをえなくなってしまったのだ。
 その先生と、こんな所でまた出会えるなんて――やっぱり運命の2人は惹かれ合うものなのね――と、クリスはボーっとなりながら思った。
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