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ハリー・ポッターと闇の姫君

第18章 【気になるアイツ】


 クリスの怒り方といったら凄まじく、それはドラゴンですら道を譲るほどの怒りっぷりだった。
 談話室に続く階段を踏みぬく勢いでドスドス音を立てて上がり、『太った婦人』の前で「フェアリー・ライト!」と怒鳴った。『太った婦人』は「何も怒鳴らなくても良いじゃない」とグチグチこぼしていたが、クリスの射貫く様な眼光にしぶしぶ入り口を開けた。

 クリスはそのまま女子寮に行こうとしたが、暖炉の前で、ハリーとロンが死んだ魚のような目をして座っている。その傍には神妙な顔をしたジニーがいた。

「ど……どうかしたのか?」

 2人の目からはハイライトが消えていた。これには流石のクリスも怒りを忘れて話しかけた。葬式のような静けさの中、ジニーがどう説明していいか困ったようにまごつきながら口を開いた。

「あの、その……2人ともダンスパーティの相手にふられちゃったみたいで……」
「僕、僕……なんであんな事言っちゃったんだろう。もう駄目だ、死ぬしかない。アハハ、そうだ、死のう。そうしよう。天文台の塔から身を投げて――」
「落ち着けロン、いったい誰に申し込んだんだ?」
「……フラー・デラクール」

 そう言うなり、ロンの頭がガクッと垂れた。何故そんな無謀な事を……と思ったが、口には出さなかった。ロンはソファーに身を沈めながら両手で顔を隠した。

「なんであんな事したのか自分でも分からないんだ。ただ――玄関ホールでフラーとセドリックと話をしていたところを、通り過ぎようとした時――頭の中がぼーっとして、自分でも分からない内に、言葉が口から出てきちゃって……あの人、養豚場の豚を見るような冷たい目で僕を見て……僕――はっと気が付いて逃げ出してきたんだ」
「仕方ないよ、ロン。あの人にヴィーラの血が混ざってるんだ。『日刊預言者新聞』の写真を撮る時に自分で言ってた。ロンはその気に中てられたんだ。でもフラーも骨折り損のくたびれ儲けだ。セドリックはチョウ・チャンと行く。僕がさっきチョウを誘った時そう言ってたもん」

 なんという、正に負の連鎖。男たちは虚ろな目をしたまま「ふふふふふ……」と笑いあっていた。まずい、このままでは本当に天文台の塔から飛び降りそうだ。
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