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ハリー・ポッターと闇の姫君

第2章 【variation】


 年老いた屋敷しもべのチャンドラーは、大声を上げ過ぎて肩で息をしていた。そのうち血管の1本や2本切れるかもしれない。クリスはソファーに寝転がりながら、イヤホンを片耳だけ外して話した。

「あんまり怒鳴るな、チャンドラー。もういい年だ、そんなに怒ると頭に血が上り過ぎて脳卒中になるぞ」
「怒らせているのはどこの誰ですか!!?良いですかお嬢さま、我がグレイン家はサラザール・スリザリンの血を引く最後の一族なんですぞ。サラザール・スリザリンと言えば――」
「――悪趣味で根性悪でマグル生まれを軽蔑した陰険で狡賢い奴」
「それは誰の事を言っているんだい?」
「あ、ドラコ」
「『あ、ドラコ』じゃない!下で待っていたっていつまでも君が来ないから迎えに来てみれば、また屋敷しもべなんかと言い争いで貴重な時間を潰して」

 そう、勝手に部屋に入って来たこのドラコ・マルフォイという少年こそ父親が決めた許婚であり、クリスの幼馴染でもある。青白い肌に細い顎、ブルーグレイの瞳に、プラチナブロンドの髪をきっちり後ろに流している。性格は悪趣味で根性悪でマグル生まれを軽蔑した陰険で狡賢い奴という、スリザリン寮の全てを兼ね備えた嫌な奴だ。
 かと言って、逆にグリフィンドール寮に選ばれたクリスがどういう性格かと言うと、我儘で傲慢で自分勝手で、自分のやりたい事には全力を注ぐが、やりたくない事には見向きもしないこれまた困った性格だ。だからこそ、喧嘩しながらも2人は今まで上手くやって来れたのかもしれない。

「チャンドラー、貴様も貴様だ!僕がいると分かっていながらいつまでもクリスと喋ってばかりで――」
「申し訳ありません、ドラコ様。どうか、どうかご容赦ください」
「ドラコ、チャンドラーはうちの屋敷しもべだ。勝手に説教するな」

 それを聞いて、チャンドラーは潤んだ瞳でクリスを見つめた。クリスは別にチャンドラーを庇ったわけではない。ただ他人に自分のおもちゃを勝手に取られたから怒っただけに過ぎない。そんな事はつゆ知らず、チャンドラーは着ている麻袋の端で涙をぬぐうと「失礼しました」と言って部屋を出ていった。
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