第5章 昔話
その後も、クラスの女子達の会話の内容は、春樹のことばかり。
「この前私ね、消しゴム落としちゃって…その時にちょうど吉田君が通って…拾ってくれたの!超優しくない!?」
「え、いいな!!」
「私も拾われたぁ~い!!」
「…」(私にだって…私にだってそれくらい…してくれるもん…。)
なぜ焦ってしまうのか、不安になってしまうのか。それはきっと、彼がとられてしまうのではないか。そんなことを想像してしまうからだろう。
「…」(良いところなんか、私だけが知ってればいいのに…。いや、それは良くないか。だって、春樹と私は、君達よりずっと長い付き合いで、それに…それに!)
そんなことをずっと思っていると、麻里に話しかけられた。
「男子の試合、終わったみたいだよ。」
「あ…うん。」
結果は、43対22で、春樹のチームの勝ちだった。
「はいバトンタッチ。」
「…」
春樹が悪いわけではないのに、春樹の言葉を無視して、コートに入ってしまった。
「…はぁ…。」
「げ、元気ないね…やっぱり…春樹君のこと…?」
「…私って心狭いのかな。」
「え、ど、どうなんだろう…でも、私もその…翔真君のこと良く言ってる女の子とかいたら…やだな……良いことなんだろうけど…付き合ってないのに…嫉妬しちゃって…何様…って感じで…。」
「!…」
麻里も同じ気持ちだった。
「じゃあ女子の試合始めるぞ~!」
「…」(は、入りますように…。)
とにかく、春樹のことは置いといて。バスケに集中。