第3章 春樹side
昔からそうだった。気づいた時には、菜月は俺の隣にいた。
「起きろ、起きろ、おい、おい!」
いつもと同じ時間に起き、隣の家のドアを開け、真っ先に向かうアイツの部屋。ベッドを蹴ると、驚いて目を開け、飛び起きる。
「…はよ。」
「ん…おはよう…。」
ボーッとしてる菜月に、追い打ちをかけるように別の部屋から聞こえた声。
「菜月〜!早く起きなさーい!!いつまでも春樹君に起こしてもらっててどうするのー!?」
「うぁぁ……うるさぁい…。」
「…」(かわい…。)
寝起きのコイツを眺めながらそんなことを思う。それから、俺も叫んだ。
「おばさん、起きました!」
「ありがとー!いつもごめんね!春樹君!」
ムスッとした顔で起きる菜月。そして部屋着から制服に着替えた。
「…遅刻すんぞ。」
「…わかってる…。」
菜月は朝に弱い。
そういえば、恥じらいもせずコイツが俺の前で着替えるようになったのはいつだったか。
「い、いってきます…!」
「いってらっしゃい〜!」
朝食を食べずに出るのなんて日常茶飯事だ。眠そうにあくびをもらした。
「…」
コイツは、俺の気持ちになんて、気づいてないんだろうな。
幼馴染だからこそ、言えないことだってある。
離れていくのが怖いから。