第1章 最悪最凶
「…付き合う。」
「!…」
「って、言ったらどうすんの?」
「…え…と…。」(嫌だ、そんなこと言う権利は、私には無い。)
「…」
「お、応援…する…。」
「…ホントに?」
「うん。」
私は微笑んだ。あいにく、作り笑いは上手い。
「…あっそ。でも付き合わねぇから。」
「え…なんで?」
「言ったろ?アイツ、彼氏いんの。彼氏と喧嘩して、俺んとこ泣きついてきて、電話で話したら彼氏が迎えに来たんだよ。」
「そ、そうだったんだ…。」
「なんでちょっとホッとしてんの?」
私の顔を覗きこんでそう言った。
「!…そ、そんなことない!」
「…もしかしてさ、お前って、俺のこと好きなの?」
「!?…」(ば、バレた!?)
「…なわけねぇか。俺の好きとお前の好きは違うもんな。」
「…?」(どういう意味?)
モヤモヤしたまま、家に着いた。
「今日泊まってもいい?明日休みでバイトないだろ?」
「え、うん。いいけど、お父さんいるよ?」
「平気。」
春樹は中年男性と関わるのが苦手らしい。父親がトラウマで、それを克服するのは難しそうなのだ。