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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第4章 白竜の彫師


「おばあちゃんは? 今日はいないの?」
「の刺青を彫って疲れちゃったみたいで休んでるよ」

 最悪のパターンだった。「むー」とも不利を察してうなっている。

「それで、結局なにを彫るか決めた?」
「ああ、名前はやめた。ハートを彫ってくれ」
「ハート?」

 サギィはひどく意外そうな顔をする。

「そんな可愛いのを彫るの?」
「いや、可愛いのは困る……うちはハートの海賊団なんだよ」

 そういえば、とは妙案を思いついたという顔をした。ろくでもない予感がする。

「キャプテン、せっかくだから船をピンクにしようよ」
「しない。……つーかはしても見えねぇだろ」

「気分の問題だよ。可愛い船に乗ってると思ったら気分も上がるもん」
「なるほど、ピンクにしてリボンもつけるって? ――俺が船長の限り絶対しないからな」

 サギィが吹き出した。腹を抱えて大笑いしている。

「本当にも海賊なの?」
「そうだよ。だからキャプテンにセクハラしたら、サギィでも海に放り込むよ」
「それ海賊関係なくない?」
「……そうかも」

 とにかくセクハラは絶対ダメ、とはサギィを牽制するようにローに抱きついた。

「……それはセクハラじゃないの?」
「これぐらい普通だろ」

 「ならあたしも」と抱きつこうとしたサギィをローは長い手で拒んだ。

「うちのクルー限定だ」
「ちょっと! それ差別じゃない!?」
「なんでもいいから早くデザイン決めてくれ」

 ふくれっ面で、サギィはスケッチブックを広げてイメージをしたため始めた。

「ハートの海賊団をイメージすればいいんでしょ?」
「ああ」
「サギィ、お茶淹れてもいい? どら焼き買ってきたから」
「危ないからあたしがやるよ。ちょっと待ってて」

 とはいえサギィは格好いいハートのデザインに苦労して、なかなか手を離せそうにない。
 おやつを気にしてが落ち着かないので、「キッチン借りるぞ」とローは声をかけてお湯を沸かした。

「、なに茶がいいんだ」
「コブ茶」
「サギィ、これどうやって淹れりゃいい?」
「お茶入れたことないの? スプーン一杯分を入れて、お湯を注いだらしばらく待って注ぐだけ」

 スケッチブックから顔を上げずにサギィは答えた。
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