第3章 1
あー、もう・・・
うるさい!
話が全然進まないじゃない!
内心イライラする。
これ以上聞くに堪えないと判断し、ウォークマンの再生ボタンを押した。
すぐに雑音はシャットダウンされた。
再生ボタンを押してから数秒後、ようやくクラスメイトと先生の茶番が終わったのか、銀八先生の合図で一人の女子生徒が入って来る。
・・・可愛い。
素直にそう思った。
目がぱっちりとしており鼻筋も高く、まるでモデルのような見た目の女子生徒だった。
先生が黒板に『黒田ナツメ』と名前を書いた。
彼女は照ればがら自己紹介をする。
本当はちゃんと聞いた方がいいのだろうけど、ウォークマンの停止ボタンを押す気にはなれなかった。
どうせ、私なんかとは縁のない子だ。
しばらくして自己紹介が終わったのか、彼女はあろうことか私の隣の席に座った。
よろしくね。
声は聞こえなかったが、口の形で彼女がそう言ったのが分かった。
私は小さく会釈をして、すぐに視線を逸らした。
彼女との会話は、これが最初で最後だろう。・・・とても会話と呼べるものではなかったけども。
その時の私は、そう思っていた。