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ただ好きなだけ

第1章 プロローグ


「ねえ、ママ、取引しない?」
普段滅多に話さない私が珍しいのか、それとも私みたいな何の変哲もない6歳児から『取引』なんて言葉が出るのが意外なのか、
ママは軽く目を見開く。
「...取引?」
「そう、取引」
顔がいつものママに戻る。でも、少し強ばったまま。
「...どこでそんな言葉を覚えたのかしら(クスクス」
元々知ってたんだよ、生まれる前から。
「まあ、そんなことはいいから。
私はね、ここがどんな場所か知ってるの
そして、ママがどういう人か、私たちをどうしようとしているのか、後は貴方の息子のこととか」
先ほどよりもわかりやすく顔を歪める。警戒心を露わにして訝しげに口を開く。
「ミユ、あなた」
でもね、もうすぐ夕飯の時間だから早く要件を終えたいの。
「取引の内容はこう
一つ私をギリギリまで、12歳の誕生日まで出荷しないこと
二つもう1人の取引相手には私のことを喋らないこと
三つ私のスコアを発表しないこと
四つ夜のママの空いてる時間でいいわ。30分だけでも私と一緒におしゃべりすること
五つできる範囲でいい、私のお願い聞いて
以上よ」
「...あなたの目的がわからないわ」
そりゃそうだよね。こんなの取引なんて言えない。
「分からなくてもいいの、
私のお願いを聞いてくれたら、なんでもするわ。雑用でも、スパイでも、なんでも。
私はあなたを裏切らない。信用しなくてもいいけど、、、」
でも、この取引は私にとってとても価値のあるものなの。
「あなたが賢い子だって、知ってるわ。
でも、あの子とミユは違う。知ってるんでしょう?」
とても抽象的な私とママの会話。
「うん。知ってるよ。私ね、ママが大好きなの。だから、ママと取引したい」
「...わかったわ」
本当に受けてもらえるとは、
「何が目的かは知らないけど、あなたの遊びに付き合ってあげる」
「ふふっ、うん、遊び、遊びだよ子供の遊び、ただのお願いごと」
ママは私を警戒するだろう。怪しんで私の事を探るだろう。
それでもいい。私は嘘なんかつかないし、演技もしない。
短い人生を謳歌するための準備にすぎないんだから。
((カラン カラン
「ママ、夕飯の準備手伝って来るね」
ママに笑顔を向ける。
「ええ、行ってらっしゃい」
ママも笑って送り出してくれる。
うん、美人の笑顔でおなかいっぱいになりそう。



さて、あと6年か。
楽しんで過ごそう。
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