第6章 新たなステージ
先輩は何を考えているんだろう
いつも優しい笑顔だった
でも、
一切自分の気持ちを表さない
ずっと張り付いている笑顔
いつの間にか私は屋上の踊場まで逃げてきてしまった
もう直ぐチャイムが鳴る
ここまでなら、もう先輩は来ないだろう
その場で座り込み、膝を抱え頭を埋める
「こんなんじゃ、小説は書けないよ……」
「小説…?」
「え…、なんで、」
何でここにいるの
「内田くん…」
「悪い、花宮の様子が変だったから…。
どうしたんだ?」
「なんか、琴鞠先輩が怖くて…」
「あいつと、なんかあったのか?」
「わかんない…。でも先輩を見た瞬間鳥肌が立っちゃって…」
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム…。内田くんは戻らないの?」
「花宮をここに1人で置いとけないだろ」
小さな気遣い
彼にとっては何気ないことなのかもしれない
でも、今の私にとってそれは__
「花宮、ところで小説って?」
「あ…、えっとそれは…」
「別に、言いづらい事なら良いよ」
彼の、
優しさに甘えてしまおうか
なるべく、小説の事は言いたくない…
でも
「ネット小説家の本中花っていう人、知ってる?」
「そいつ、みのりが好きな作家…」
「それ、私なの。最近、恋愛モノを書かなくちゃいけなくて、恋愛ってしたことないから気持ちがわからなくて…」
「だからあいつとか俺とかと一緒になるようになったのか」
「うん…」
「ありがとう、私内田くんと話して少し楽になれた。今日は息抜きするよ」
「…また、辛くなったら言え。俺は小説とかよく分かんないけど話を聞くくらいだったら出来るから」
「うん。じゃあ今日は帰るね。ばいばい」
「あー!光!どこ行ってたの!」
「あぁ」
「…光?」
「なんでもねえよ」