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理由【ヒロアカ】

第2章 理由その2



その日、私はとても気分が良かった。

先日ヴィランとしての初陣を飾り、あのオールマイトにも名前を覚えて貰えた。
これからもオールマイトに会いたい、追い掛けてもらいたい。彼の特別になりたい。
『』
オールマイトから呼んで貰った自分の名前がとても甘美だ。
――もっと。
もっと呼んで欲しい。私を求めて欲しい。
あの時はヴィランらしく仮面を被っていたけど、今度は何を着て何をしようか。
どうすればまたオールマイトに追いかけて貰えるか。

この前の瓦礫と埃のせいで前の仮面はぼろぼろになってしまった。とりあえず新しい仮面を用意していつでも被れるようにしている。
どうせなら顔も覚えて貰えばって? 素顔を隠すのはヴィランの嗜みでしょ。

私は鼻歌を歌いたいほど高揚していた。
目的を決めずに出掛けようと自宅の靴箱を開けた。
こういう気分の時は高いヒールの靴を履きたくなる。足に纏わる個性持ちの私は足に拘る事が多い。
足の怪力の個性でハイヒールを壊さないように。でも足を、個性を美しく見せたい。
それはきっとヴィランとしてだけでなく、女性としての矜持だろう。



出かけた先の繁華街が騒がしい。行き交う警察とマスコミらしき人々。何かあったのだろうか。
しかしそんなのはどうでもよかった。
オールマイト。次に彼に会うためには何をすればいい。

私は少々浮かれすぎていたのかもしれない。
「…きゃ!」
ほんの少しの段差にハイヒールが引っかかり躓いてしまった。

「やだ」
起き上がろうとしたら足元に違和感がある。靴を見るとヒールが折れてしまっている。
「最悪」
さっきまでの気分が台無しだ。呟き考えあぐねた。
とりあえず靴屋で新しい靴を買おうか。でもその靴屋に行くための靴は?
「…ほんと最悪」
しかも雨まで降り始めた。大した事はなかったけど気分は落ちる。

この靴で歩くのを諦めて、裸足になろうかと立ち上がる直前。突然目の前に手が差し出された。
「大丈夫かいお嬢さん」
「!」
見上げると背の高い男性だった。金髪の長めの髪、痩せてるというよりも棒のような体をぶかぶかの服で覆っている。
それでも不信感を抱かなかったのは、男の振る舞いが紳士的だったからだ。
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