第1章 ひとつの光
夏の昼下がり。
太陽がギラギラと燃え盛る。
アスファルトの上には陽炎。
蝉の不揃いな鳴き声が耳を通る。
「征十郎」
大好きな声が俺を呼ぶ。
俺の手にあるのはバスケットボール。
母さんが必死で父さんに交渉してくれた唯一の息抜き。
身体が弱かった母さんは日傘を差し、近くのベンチに座っていた。
「俺、バスケで世界一強くなる!」
「ふふ、それはいいわね
征臣さんも驚かれるわ」
優しく微笑む。
青白い綺麗な肌。
精神的に追い詰められる日々。
外に出ることを許された僅かな時間。
とても楽しかった。