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落花

第12章 12




「っ!」

目を開くと、月の光を写した湖。

「きれい…」

目の前に広がる美しい光景にしばし言葉を失う。

「ね、気に入った?」

アーサーの瞳に捕えられる。
湖と同じ、綺麗な青色。

「とっても…ねぇ、アーサーの瞳と同じ色ね…綺麗で、吸い込まれそう。」

うっとりとした表情で湖畔を見つめる。

やっと気がつく、この青に囚われていると。

私はきっと、アーサーのことを…

「良かった。この景色をキミに見せたかった。
キミの瞳に映るこの景色はどんな色だろーなー、とか。
きっと綺麗なんだろうな、って思ってた。」

「アーサー…」

暫く2人で見つめ合う。

この時間が永遠に続いて欲しい。そんなことを思いながら彼の青い瞳ごしに、月を見た。


綺麗な…三日月……

数ヶ月前のあの夜と同じ。

「っ…!」

彼が居なくなった夜と同じ三日月が浮かんでいる。

駄目だ、私には彼が…
この気持ちを、アーサーに対する気持ちを自覚してはいけない。

見詰め合っていた瞳を逸らす。

「アナスタシア…?」

「ごめん、ちょっと肌寒くなってきたね…」

下手くそな言い訳をこぼす。

これ以上一緒に居ては駄目。

気持ちが止められなくなる…


「…そーだね。帰ろっか。」

アーサーが呟く。
彼の声には戸惑いが混じっていた。







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