第10章 10
セバスチャンが彼女の着替えをさせる。
傷の手当ては済んだし、あとはこの子が目覚めるのを待つだけだ。
そんなことを思いながら彼女の顔を見つめる。
今はもう魘されていないみたい。
少し苦い気持ちになっていると、彼女を着替えさせていたセバスチャンが小さく声を上げる。
「セバス?どーかした?」
セバスチャンは彼女のお腹のあたりを見て固まっている。
不思議に思って俺もセバスチャンの視線の先を見つめると…
「なに、これ…」
彼女のみぞおちのあたりに大きな痣が出来ていた。
セバスチャン「このアザは…」
「出来てからそんなに時間は経っていない。きっとあの会場で受けた暴行だ…」
セバスチャン「顔のみならず、女性の腹部まで殴るとは…それもきっと強い力で…」
「この子のこと、こんなに虐めて…許せない。アナスタシアは何もしていないのに。手足だって拘束されて…沢山傷が出来て…」
セバスチャン「大丈夫、でしょうか…」
「内臓が傷付いているかも知れない。触って調べるよ。」
彼女の細いお腹に手を触れ、アザの辺りを軽く押す。
「っう…!」
眠っている彼女が痛みに顔を歪める。
「ごめんね、痛いよね。少しだけ我慢してね…」
苦しげな表情を浮かべる彼女に声を掛けながら触診をする。
「いっ…っ…」
「もう済むから、少しだけ耐えて…」
苦しげな彼女の表情。
どうして彼女がこんな目に遭わなくてはいけなかったんだろう。
守ることの出来なかった悔しさが俺の胸を覆う。
「ごめんね…」
触診を終える、恐らく内臓は大丈夫だ。
「アナスタシア、もう痛いことはしないから
このままゆっくり休んで。セバスチャンも、ありがとう。彼女の側には俺が付くから、セバスはもう休んで。」
セバスチャン「しかし…」
「だいじょーぶ、元医者だって言ったでしょー?
だから安心してよ。俺が責任持って看病するから。」
セバスチャン「…かしこまりました、必要なものなどあればお申し付けください。」
「はーい、ありがとう。おやすみセバス」
セバスチャンが部屋を出る。静まり返った部屋に、彼女の規則的な寝息だけが聞こえる
彼女の手を再び握る。
体温も戻ってきた。
「今度は俺が守るから。」
そう誓う