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落花

第5章 5





アーサーさんから逃げるように私室へ戻ってきた。

「これからお世話になるのに…おかしな態度を取ってしまった……」

私は先程の自分の態度を猛反省していた。
明日なんて謝ったらいいか…考えることに精一杯で、彼が手元に居ないことにも気が付かなかった。

「アーサーさんのお部屋に朝一番に伺って…それからどうしよう。
何て言ったら良いの…」

彼と過ごすまで人と深く関わったことがなかったため、かしこまった謝罪の言葉などわからない。


「伯爵に教えてもらおう…」

伯爵は毎晩のように精力を分けるため部屋に来てくれる。
今夜もそろそろ来る頃だ。


コンコン

「伯爵っ!」

ノックに反応して部屋を開ける。

「伯爵、今夜もありがとうございます。
キスの前に、教えて頂きたいことが…」

扉を開いて訪問者を確認すると、予想外の人物が立っていた。

「あ、アーサーさん?」

「やぁ。さっき振りだね〜。」

なんでアーサーさんが?
疑問に思った後に先程の非礼を思い出す。

「ごめんなさい、伯爵だとばかりっ…!
それに…あの、先程はごめんなさ、申し訳ありませんでした!」

勢いよく頭を下げる私に驚いた気配がする。


「えー?何のコト?俺、キミになにかされたっけ?」

アーサーさんの不思議そうな声がする。

「だって私…心配してくれたアーサーさんに失礼な態度をとってしまって…」
しゅんとしながら説明するが、アーサーさんは記憶に無いな〜と首を傾げている

先ほどのことを咎められるものだとばかり思っていた私は戸惑う。

「え…?それでは何故私の部屋へ?」

素直に疑問を口にすると、アーサーさんが んーとねー と言いながらポケットから何かを取り出す。

「これは!」

「はい、コレ。君の大切なモノでしょ?」

アーサーさんの手から彼の小瓶を渡される。

「私、いつ落としてっ…!本当に大切なものなんです!ありがとうございます!」


「ん。そーだと思った。俺がびっくりさせちゃったからだよね。ごめんね。」

そう言ってアーサーさんが微笑む。

「あの…これが何か聞かないのですか…?」

思わず疑問を口にしてしまう。
灰が入った小瓶を大切だ、なんて…きっと不思議に思うはずだから。







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