第16章 距離と想い
‘綺麗な青い瞳の貴方へ
突然居なくなってごめんなさい。
貴方とは一番長く一緒に居たのに、最後に傷付けてごめんなさい。
私に沢山優しくしてくれてありがとう。
小説の読み方や、コーヒーの淹れ方…色んなことを教えてくれましたね。
伯爵から聞きました。私が最初にこのお屋敷に来たとき、森で倒れていた私を助けると言ってくれたのは貴方だったと。
本当にありがとう。貴方のお陰で新しい世界を知ることが出来た。
街へ行ったとき、私を庇ってくれてありがとう。ドレスを褒めてくれてありがとう。いつも大切にしてくれてありがとう。
貴方の瞳にもう一度見つめられたら、今度こそ貴方に囚われてしまう。それが怖くて、酷いことを言ってごめんなさい。
とっくに囚われてしまっていたことに、この手紙を書いている今 気が付きました。
貴方のことをもっと大事に出来たら良かった。
ごめんなさい。私を愛してくれてありがとう。
そしてさようなら。私が愛した二番目のあなた。
アナスタシア’
読み終わると、自然と涙がこぼれた
「こんなの…ずるいでしょ…」
キミも俺のことを愛してくれていたなんて。
それを、居なくなった今伝えられるなんて。
「キミは、狡いよ…」
伯爵「アーサー、彼女の居場所の手掛かりは…」
「何も書いてない。言いたいことだけ言って、居なくなっちゃった…」
伯爵「そうか…アーサーにも伝えないということは、もうここには戻ってこないつもりか…」
「そんなの、許さないよ。愛する女の子を二回も失うなんて耐えられない。」
伯爵「探すのか?しかし彼女はサキュバスだ。普通の人間を探すのとは違うんだよ?」
「そんなの、やってみないとわからないじゃない。幸い俺には時間があるし、彼女にも…」
待って、サキュバスが精力を摂らないとどうなる…?
消えてしまったり、するのかな…
「ねー、伯爵…俺らヴァンパイアがずっと血を摂らないとどうなるの…?」
伯爵「…人間と同じで、我々にとっての血は食事と同じだ。食事を取れない人間が飢えて死んでしまうように、我々も…」
伯爵の言葉に血の気が引く
もう二度と、あの笑顔が見られないかもしれないなんて