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落花

第15章 アーサーside




馬車から降り、彼女の手を引きながら目的地へ向かう。

あたりはすっかり暗くなっていた。


……



「アナスタシア、着いたよー。目を開けて…」

目を閉じていた彼女に到着を知らせる。

綺麗な月に、綺麗な湖。湖面には星が降っているように見える。

きっとキミは気に入ってくれるはず


そして、彼女のローズピンクの瞳に湖の澄んだ青と煌めく星が写る…


彼女は一瞬驚いたあと、小さくこぼす

「きれい…」

「ね…気に入った?」

ローズピンクに写り込んだ青と白銀を見つめながら問う。

「とっても…ねぇ、アーサーの瞳と同じ色だね。綺麗で、吸い込まれそう」

「…良かった。この景色をキミに見せたかった。
キミの瞳に写ったこの景色はどんな色だろう、って。
きっと綺麗なんだろうな、と思ってた。」

うっとりとした表情のキミと、互いの瞳を見つめ合う。


今なら、言える…俺のキモチ。

「ねぇ、アナスタシア…俺は、キミのことを…」


言いかけたとき、不意に彼女の瞳が揺れる。

「っ…!」

そしてそのまま逸らされる視線。

どうしたの、キミ。
なんだか様子が変。

「アナスタシア…?」

疑問に思って口を開く


「あっ、ごめん…あの…ちょっと肌寒くなってきたね?」

目を逸らしたまま答える彼女。

それに、先程まで近かった距離が遠くなる。

確かに、彼女の服装は肌寒いかもしれない。上着を貸してあげようか、そう言いかけたけれど…

でも…それだけじゃない、何か…


「…ん、そーかも。帰ろっか?」

風邪でもひくといけないし、と付け足す。


あれ、キミはこんなに遠かった…?

空いてしまった二人の距離が…寂しい。


気持ち、伝えられなかった。


なんとなくぎこちない空気を抱えたまま、俺たち二人は湖を後にした。


二人の手は、繋がれないまま…








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