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落花

第15章 アーサーside




アナスタシアと過ごす日々が増えてきた。

‘居なくなったあの子’でいっぱいだった俺の心に、彼女が滑り込んで来ているのを感じる。

全然、嫌じゃない。

それどころか、キミのことをもっと知りたいと思う。

‘あの子’と離れてから数十年は経つだろうか。

このまま真っ暗なまま…ただ永遠を生きていくんだと思っていた俺の前に

数ヶ月前…キミが現れた。

キミも、俺と同じだった。最初はお互いの傷を舐め合うだけで満足していたのに…

この頃、キミと居るのが当たり前になっている。

キミと居るのは心地イイ。

キミを守りたいと思う。

きっと俺は、とっくにキミに落ちている。




……


この日は朝からアナスタシアと約束を取り付けていた。

怖い夜を忘れられるほどキミを楽しませてアゲル。

なんて、そんな建前を使って。

本当は俺がキミと過ごしたかっただけなんだけど。


「そろそろ準備出来てるかなー?」

柄にも無く緊張して、アナスタシアの部屋へ向かう。

一刻も早くキミの顔が見たい。彼女の部屋へ辿り着く。

俺は扉の前で少しだけ深呼吸した。


「こんこん、入るよー?」

扉を開けると、目に飛び込んで来たのは沢山の洋服の山と睨めっこするキミ。

「あれー?ちょっと早かった?」

「っ!アーサー?ごめん、もう時間?」

洋服の山から彼女が慌てて声を上げる。

「ぜーんぜん?キミに会いたくて、早めに来ちゃったー」

冗談ぽく言ってみたけど、本心なのは俺が一番よくわかっていた。

「そうなの…?あ、ごめんね。すぐに決めるからっ…!」

そう言いながらも、一向に決まる気配が無い。

もしかして、俺のために悩んでる?

なんとなく嬉しくなり、彼女に問いかけてみる。

「ねー、もしかして…俺の為に悩んでくれてるの?」

「ち、違う!久しぶりに外に出るから、わくわくして…」

慌てた様子の彼女が答える。

へー?わくわくしてくれたんだ?可愛い。

可愛い反応を見て、俺の意地悪スイッチが入ってしまう。


「ふーん?俺と出掛けるの、そんなに楽しみだったの?かーわいー」


真っ赤になる彼女。やっと墓穴を掘ったことに気が付いたみたい。

やっぱり、可愛い。







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