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テニスの王子様*短編集

第1章 ふわふわオムレツ【菊丸英二】





菊丸「だーかーらー。明日、俺ん家 姉ちゃんも兄ちゃんも出掛けて居ないんだよね。で、名前ちゃんにお昼作って貰いたいなーって…駄目かにゃ?」



私の言葉に業を煮やした様に声のトーンが僅かに上がる。ああ…もしかすると受話器の向こうでは頬を膨らませているのかも知れない。
私の彼氏は世界中の人に自慢出来るくらい可愛い!そう、自負している。

しかし、彼から飛び出した言葉は意外な物だった。いつも離れたくないとか、好きだって言って欲しいとか…そんな我が儘は言うけれど、彼の家でご飯を作って欲しい。
なんていう、まるで同棲している恋人や新婚夫婦みたいに見える。そんなお願いを…私は初めて聞いた。



菊丸「俺…ずっと名前ちゃんの手料理、食べてみたかったんだ。ね、一生のお願い!」



この一生のお願いとやらを、今までどれくらい聞いて来ただろうか…。でもあまりに可愛くて、最終的にはいつも頷いてしまう。
手料理…か。食べて貰いたい気もするし…何だか後の感想が怖い気もする。
私が暫く沈黙していると、少し落ち込んだトーンの声で問い掛けて来た。



菊丸「やっぱ、無理だよね…」



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