第3章 手と手
美穂の言葉が、美穂の真っ直ぐな瞳が、冷たかった心の影を陽だまりに変えていく。
「......ん」
「ふふっ。あ、そうだ!この子が産まれたら唐揚げのお礼、作ってあげるね!」
「いいよ、礼なんて」
「私が作りたいの~!得意料理のカレー!」
「か、れい?」
「う~ん、肉じゃがの辛いやつ?」
「いつも食べてるよ」
「あれは唐辛子でしょうがッ!違ッ、もっとこう、美味しいやつ!」
「美穂は相変わらず言葉が足りないよね」
「いやぁ~、家康ほどでは...んふふ」
「誉めてないから」
「うん、知ってる!あははっ」
ホントに美穂といると調子が狂う。
(一緒に親に、か)
それも悪くないかもしれない。
そう思うと、早く美穂の言う『かれえ』が食べてみたいと思えた。
完