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【HQ澤】不思議な桜

第7章 お目当ての桜は


一方、名は、開演前に座席を覗いた時から澤村の存在を気づいていた。
恥ずかしい気持ちと、頑張ってきた姿を見てほしい気持ち。それはどちらも自分のためでもあるが、
『演劇はなぁ』
と眉をハの字にしている澤村に演劇も楽しいと少しでも思って欲しかった。
ずっと一緒に居られない関係は今回の役と少し似ていて、離ればなれになる関係も似ていた。
そんな澤村の視線は劇終盤になっても舞台を見ている事に嬉しくなり、終わった後も舞台袖から楽しそうにする姿をこっそり見送っていた。
そして最後の公演が終わってからしばらくして鳴ったスマホ。
『澤村君が探してるよ』
と先に部室に行った部長からの連絡。
衣装のまますぐさま向かえば少し照れた澤村の姿。
「澤村先輩!」
と呼びかけると驚いた澤村の顔。
バタバタと近くに寄ってくる名は衣装がゆれて出会った頃さながらの感覚に陥る。
(三度惚れだ)
と内心焦りつつも冷静になる澤村と、嬉しそうにする名に、メイも察しがつき
「澤村、今日はあとミーティングだけだから待っててあげてよ」
と衣装を着替える様に名に促して部室に入ってしまった。

一方、閉め出されてしまった澤村は行く宛なく片し終わりだした文化祭を眺めつつ、体育館近くのベンチで待ちぼうけ。
(可愛、かったよなぁ)
と染々しては照れて、外の寒さで冷静になりを繰り返し煮詰まった頃
「澤村先輩っ」
と名がやってくる。
そう言えばこんなにも自分のもとに嬉しそうにくる名は今まで居ただろうか。
反応のない澤村に名が不思議がり、その事を伝えると
「会うの久々ですから」
と少し照れる名をまた可愛いと思ってしまう自分に笑いながら
「俺、多分名が好きだ」
と伝え、
「恋愛ってのはよく分からないけど、もう一目惚れ三回位してる感覚」
と笑う。一方名も驚いた表情で、でも
「多分って何ですか」
と笑う。
「お互い部活もあるし、付き合う前提でやっていかないか?」
そんな澤村に、最後まで真面目だなぁと笑えてしまい、けれども、
「お友達なんて直ぐに飛び越えますよ」

「私も多分好きです」
名も笑えば、二人とも笑顔で、その日は一緒に帰宅した。
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