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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第3章 ラッコ鍋(尾形編)



「あ。怒ってる」

 私は縁側で茶を飲んでいた。
 そして本日の来客を見て、ボソッと呟いたのだ。

「人の顔を見るなり何だ。怒ってねえよ」

 低くそう呟いた男は、縁側にドサッと獲物を投げた。
 どうせまた鳥か何かだろうと、私はそれをよく見ず、とりあえず茶をズズッと飲んだ。

「毎度どうも……あ、お茶をご用意しました。どうぞ」
「いらねえ。すぐ帰る」
「やっぱ怒ってるじゃないですか」

 すると去りかけていた尾形さんは外套を翻し、ゆっくり私を振り向いた。
 私は背筋がゾクッとした。

「まさか、こんな奇妙な場所に、好き好んで来る奴が他にもいたとは思わなかった。それだけだ」

 尾形さんは私を見下ろす。目が……目が怖い!!
 肩に担いだ銃が見える。下手すれば頭をブチ抜かれるのでは?とドキドキする。

「音之進様は私が呼んだわけじゃないですよ」
「『音之進様』、ねえ……」

 つっかかってくるなあ。私に八つ当たりするくらいなら、この前のとき、乗り込んでくれば良かったのに。

「ずいぶん仲良くおしゃべりしてたじゃねえか。
 ま、少尉殿は中身はアレだがイイトコのボンボンだ。歳も俺よりは近い。
 まあお嬢様は歓迎したくもなるよな?」

 尾形さんが! ニコニコ笑ってる!! あなたが笑うと怖いから止めて!!

 でも『他にも来てる人がいる』というのは隠してたわけじゃない。
 そもそも、茶も茶菓子もタダ。私が出す側なのに、何でこんなに塩対応されなきゃいけないの。

 何か、浮気現場を責められてるみたいだ。

「私のことはどうでもいいでしょう? てか、音之進様とはお知り合いだったんですか?」
「知り合いというか、元上官殿と言うべきか」

 そう言って前髪をかき上げる。あんまり突っ込まんとこう。撃たれたくない。

「中でお話してたのは、この前は外が寒かったからですよ」
「で、独り身の女が、男を部屋の中に入れたと?
 その後はお楽しみだったわけか?」

 と言いながら、ドサッと縁側に腰かける。
 さすがに私もムッとする。大体、ここは茶屋でも何でもない。誰と話してても別にいいじゃないか。

「何かあるわけないでしょう? 失礼な人ですね」

「鯉登少尉がいたということは、他にも来てる奴がいるんだろう?」

 いや自分から振った話を変えるなよ!!

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