第18章 主お世話係(仮)
審神者部屋に戻って来た後、蛍丸は私を押し倒した。
え…えええ…結構な力だね、ほたるん。
そして、私の腹に馬乗りになって膨れっ面で静かに告げて来た。
蛍丸「主、他の刀剣ばっかり。俺の主でしょ?」
怒っているというより、悲しげなその表情に一瞬ドキンと鼓動が跳ねる。
私は目の前の彼を見上げながら、彼の頬を撫でた。
主「ごめんね?ほたるんも皆も大事な家族、大好きだよ」
蛍丸「じゃあさ、俺にも三日月みたいにちゅーってして」
可愛いおねだり、かと思いきや…真面目な表情で告げられた言葉に耳を疑った。
えー…いや、犯罪でしょうよ?
主「……だ」
蛍丸「やだ。駄目って言わせてあげないよ」
蛍丸の顔が近付いてくる…目を瞑った瞬間、唇が重なった。
軽く触れるだけの口付けが、数十秒。
何なんだろう…子供じゃないのは分かってるのに、可愛過ぎてもう…昇天してしまいそうだ。
漸く唇が離れて蛍丸を見ると、蛍丸は片目を閉じて笑った。
蛍丸「これが接吻っていうやつだね。国行と国俊だけ狡いもん、これで俺も一緒」
クスクスと楽しげに笑うと、タタッと出て行ってしまう。
男前ほたるん…侮れん。
ふと見れば、政府からまたも刀が届いていた。
顕現しろ…という事か。
せめて、こんのすけ来ようよ。顕現して下さい、って言うだけでも良いじゃん。
ただ刀を間近くに置かれてた人間の身にもなってよ、手置くとこ間違ったら切っちゃうじゃん。
主「でも…この子達は主を選べないんだよね。私の元に来て、本当に幸せなのかな?」
ぶつぶつと呟きながらも顕現札に口付けをし、そっと刀に触れさせた。
すると、またもあの美しい桜が舞う。
主「綺麗だ…」
舞った桜吹雪の中に、人影が映る。